「頭隠して尻隠さず」という言葉、一度は耳にしたことがあるでしょうか?
これは、問題や失敗を部分的に隠すことで全体が隠せると錯覚する様を表す古くからの日本のことわざです。
しかし、部分的に隠したところで全体は明らかになる、つまり、問題を半分だけ解決したところで、他の半分が露見するという真実を教えてくれます。
「頭隠して尻隠さず」の読み方・意味
具体的には、大事な部分が見えてしまっているのに、自分では完全に隠れていると思い込んでいる状況を表します。
この表現は、悪事や欠点を完全に隠すつもりでいるけれども、実際にはそれが部分的に露見しているという、不完全な隠蔽を揶揄するために使われます。直訳すると、「頭を隠してお尻を隠さない」となります。
物事の全体像を理解していない、または問題の全体を把握せずに対処しようとする行為を指摘するのにも使われます。
例えば、ある問題の一部を解決しただけで全体が解決したと錯覚する様子や、自分の行為が他人に見えているにも関わらず、それに気づかずに行動する様子などを表すことができます。
このことわざは、一部を隠すだけでは完全な隠蔽にはならないということ、また自覚しないでいることの問題点を示しています。
だから、自分自身の欠点や問題を隠そうとする人に対する警告や注意喚起としても使われます。
「頭隠して尻隠さず」の由来
出典:Wikipedia
この行動を見て、人間が全てを隠したつもりでも一部が見えてしまうという愚かさを表現したのが「頭隠して尻隠さず」の語源とされています。
この言葉は、一部の欠点や問題を隠して全体を隠したと思っているが、実際にはそれが他人からはっきりと見えてしまっているという状況を表すことが多いです。
自己の理解と他者の視点の間のずれや、自覚のない欠点を皮肉った表現としても使われます。
また、「頭隠して尻隠さず」は、江戸時代のいろは歌留多(いろはかるた)にも取り上げられ、知られています。
ここでは、「ふんどし一丁の男が幔幕から尻を出した図」が描かれ、この言葉の意味を視覚的に表現しています。
「頭隠して尻隠さず」の使い方
「頭隠して尻隠さず」の例文
- スキャンダルが発覚した政治家が、一部の証拠を消そうとしたが、メールの履歴は未だ残っていて、頭隠して尻隠さずの状態に陥った。
- マーケティングチームが製品の不具合を消費者から隠そうとしたが、既にSNS上でその情報が広まっていた。まさに頭隠して尻隠さずの状態だった。
- 結婚する前に過去の浮気を隠そうとした男性。だが、その相手が新しい奥さんの友人だとは知らず、頭隠して尻隠さずの状況になった。
- 学生が試験にカンニングしようと、メモを隠していたが、教師の目の前で落としてしまった。頭隠して尻隠さずの事例そのものだ。
- 公共の場でタバコを吸った男性が、タバコの吸い殻をポケットにしまったが、臭いが周囲に漂っていて、まさに頭隠して尻隠さずだった。
- 遅刻した社員が交通事故を理由にしたが、実は家でゲームをしていた。だが、彼のSNSでその様子がアップされていて、頭隠して尻隠さずの事態になった。
- チームのミーティングで、一部の失敗を隠そうとしたプロジェクトリーダー。しかし、その結果によって全体の進行が遅れ、頭隠して尻隠さずの状況を招いた。
- プレゼンテーションで、研究の欠点を隠そうとした研究者。だが、質疑応答の時間にその問題が明らかになり、頭隠して尻隠さずとなった。
- ガーデンパーティーで、隣人が自分の犬のフンを隠そうとしたが、犬が再び同じ場所で用を足してしまい、頭隠して尻隠さずの状態になった。
- オンライン授業中にゲームをしている学生が、ビデオをオフにしたが、ゲームの音がマイクに拾われ、頭隠して尻隠さずの状態になった。
「頭隠して尻隠さず」の文学作品などの用例
「いやはや、こいつは大笑いだ。……あなたはうまく隠しおおせたつもりだったでしょうが、種はさっきからあがっているんですぜ。……版木だけは本でかくしても、膝の木くずはごまかせない。あなたが御法度の大黒尊像を版木で起していたことは、さっきからちゃんと見ぬいているんです。……頭かくして尻かくさず、叔父上、年のせいで、あなたもだいぶ耄碌なすったね。……ほら、証拠はこの通り」(久生十蘭 『顎十郎捕物帳 咸臨丸受取』)
「頭隠して尻隠さず」の類義語
- 柿を盗んで核を隠さず
- 雉の草隠れ
- 団子隠そうより跡隠せ
- 身を蔵して影を露す
「頭隠して尻隠さず」の類義語をいくつかご紹介します。
柿を盗んで核を隠さず
これは比喩的に、「悪事を働いてその証拠を隠し切れなかった結果、結局自分の行為が露見してしまう」状況を指します。
具体的には、何かを隠し通そうとしても、そこには必ず証拠が残るという意味があり、その証拠が露見したときに、自分の行為が暴かれてしまうという警告を含んでいます。
雉の草隠れ
これは比喩的に、「一部を隠しても他の部分が露見している」「全体を見渡してみなければ、自分が完全に隠れていると錯覚してしまう」などの状況を示す表現として使われます。
つまり、自己の欠点や失敗を隠そうとしても、それが部分的に見えていて完全には隠しきれていない状況を指すことが多いです。
団子隠そうより跡隠せ
具体的には、「団子」はここでは秘密や悪事を象徴しており、「跡」はその証拠や痕跡を指します。
たとえば、こっそりと団子を食べた場合でも、団子の串や包装紙などの証拠が残っていれば、その行為が他人に発覚する可能性があります。
したがって、そのような証拠をきちんと隠すことが重要という意味を表しています。
身を蔵して影を露す
たとえば、誰かが壁の後ろに隠れているとします。彼は自分自身(身)を壁に隠しているつもりでも、彼の影(影)は地面に映り、他の人がそれを見て彼の存在を知ることができます。これが「身を蔵して影を露す」の直接的な意味です。
これを比喩的に解釈すると、自分の欠点や失敗、あるいは秘密を隠そうとする行為が、それ自体が新たな証拠を生み出し、結果的に自分の隠したい事実を露わにしてしまう状況を指します。
「頭隠して尻隠さず」の英語
「頭隠して尻隠さず」の英語表現を、「ことわざ・慣用句の百科事典」よりご紹介します。
※英語の声:音読さん
The foolish ostrich buries his head in the sand and thinks he is not seen.
- 直訳:愚かなだちょうは頭を砂の中に隠し、他から己の姿を見られていないと思っている。
- 意味:本人は完全に隠したつもりでも、他人には気づかれてしまうものだ。
- 用語:foolish:バカな、まぬけな / ostrich:ダチョウ / bury:埋める
You dance in a net and think nobody sees you.
- 直訳:網の中で踊っているのに、だれも見ていないと思っている。